恩師

「ハイ、ここはもっと大きく歌うように!ラララ~」 目を閉じれば今でも聞こえるあの大きな声。 フォルティシモで弾くのが苦手だった僕を鼓舞するように指導してくださった。 先生の声が大き過ぎてピアノの音が聞こえないほどだった。 18歳の時に先生と出会った。 とりあえず弾いてごらんと言われ、ビートルズの「イエスタデイ」を弾いた。 「とてもいいけど、それはただ聞いたものを弾いてるだけ。楽譜どおりではないから きちんとリズムをとって。基礎から始めましょう」と、そこから全てが始まった。 バイエル、ハノン、チェルニーなどで基礎練習を繰り返し、 「エリーゼのために」「トルコ行進曲」などの初級者向けの曲での仕上げ。 と同時にビートルズなどの好きな曲も弾かせてくれた。 そしていつからか、自分で作曲するようになっていた。 先生のところへは約10年通い、ショパンやリストまで弾かせてもらえるようになった。 しかし突然、先生は引っ越して行ってしまった。 その理由は複雑そうで、先生も寂しそうで悲しそうだった。 その後、自分はCDや楽譜を作った際に先生に送った。 このように音楽が作れるようになったのは全部先生のおかげですと、ただ伝えたかった。 けれど返事はなかった。いろいろと大変だったのだと思う。 今日、夕焼けを見ながら先生の訃報を聞いた。今年1月に亡くなったという。 夕陽が涙で滲んだ。 先生には僕のピアノが聞こえているだろうか。 また一緒に歌ってくれているだろうか。 ほんとうに全部先生のおかげなんです。 猫が大好きだった先生。 心から、心から感謝しています。


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